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日立物流

(前編)サプライチェーン経営を疑似体験するSCMゲームで世界に挑戦する

SCM競技会世界大会初出場の日立物流チームが、なぜ5位入賞できたのか

みなさんは、サプライチェーンマネジメント(以降:SCM)のゲームがあり、その世界大会があることをご存知ですか?SCMゲームは、モノの調達から生産、物流、販売の疑似体験を通じて、全体最適視点での意思決定や合意形成など、実際の経営に通じる技術の習得を目的としたものです。今回は日立物流チームが世界大会で入賞するまでの道のりと、SCM教育の重要性についてお届けします。

「日立物流はビジネスコンセプト『LOGISTEED』を掲げ、お客さまへの価値提供の範囲を、物流からサプライチェーン領域に拡大すべく、サプライチェーンソリューションの開発を推進しています。併せて、社内のサプライチェーン領域の知識の底上げも重要性を増しています」

スマートロジティクス推進部の西川貴裕さんは語る。SCM は調達・生産・物流・販売等と業務の領域が広範囲だが、書籍や座学的なアプローチが多く物流会社の立場では包括的に理解・経験することが難しいため、どうしたらいいものかと行き詰まりを感じていました。

この行き詰まりの中で出会ったのが、SCMゲーム。そしてその出会いは西川さんの想像を超えて世界大会まで続いていく。

緻密な業務プロセスを再現したSCMゲーム

日立物流は2020年に行われたSCM競技会(Global Professional Challenge、通称GPC)世界大会において、日本企業では初の5位入賞を果たしました。この競技会は、SCMの教育プログラムとしてAPICS※が認定するもので、オランダのInchainge社が開発したコンテンツである「The Fresh Connection」を使って毎年行われています。

※APICS(American Production and Inventory Control Society)とは、1957年に米国で設立された、SCMに関する 教育と資格認定を専門とする世界最大の団体。APICSの提供する資格はSCMの国際スタンダード資格となっています。

SCM競技会は、架空のフルーツジュース製造会社、The Fresh Connection社のサプライチェーン経営の擬似体験を通して、SCMに関する業務プロセスを把握し、それぞれのプロセスで連携して意思決定を行いながら、ROI値(投資利益率)の結果で業績を競うものです。

営業、需給調整、物流・製造、調達を担当する4人1チームで進行します。それぞれの部門の業務アクションをSCM戦略に準じて、それぞれの担当者が時間内に入力すると、その1年後の結果がROI値で示されるようになっています。

どのパラメーターがどのように結果に反映されるかは、プレイヤーには伏せられています。例えば、商品を大量に作ればたくさん売ることができるが、製造設備も多数必要となって生産コストが上昇。かといって製造設備が少ないと、必要な商品を届けることができず違約金が発生します。そういったことがROIにどのように影響するかは、実際にやってみないと分からないようにできているわけです。

大会は練習ラウンド・日本予選、日本決勝、そして世界大会の順に行われます。

練習ラウンドで色々試しながら、裏で動いているロジック、ゲーム内のビジネス世界の法則を理解しながら進めていくことになります。

本番では、2時間を1ラウンドとして、4ラウンドを繰り返し、全体を集計しROIが最も大きかったチームの優勝となります。

ゲームのロジック自体は変わりませんが、ラウンド毎のビジネス条件はその都度変わります。例えば、第一ラウンドでは生産工場は日本で消費者も日本にしかいない、第二ラウンドでは中国市場もターゲットになる、といった具合です。

また、途中で製造機器の故障や台風が発生して物流に影響するなどトラブルも発生します。そのようにして、リアルなSCMを再現するように作られているわけです。

世界から22チームが参加するSCM競技会に挑戦する

今回、日立物流のチームが初参加するきっかけとなったのは、西川さんが共同研究パートナーの方から参加を勧められたこと。今後の日立物流におけるSCM人財育成の重要性を感じていた西川さんは、この大会に大きな興味を抱きました。

しかし、参加するためには、サプライチェーンの知識がある人財でチームを作る必要がありました。そこで、2016年から西川さんが取り組んでいた、サプライチェーンの設計ツール開発・社内展開に関係していたメンバーを中心に、DX・イノベーション部の田中佑輔さん、藤波翔平さん、2人の上司である天春(あまがす)洋平さん、そこに営業の人財としてサプライチェーン・ソリューション3部の延康裕さんを加えた部署横断のチームを結成。大会に臨むことになりました。

サプライチェーンの現場にいる強みを活かして戦う

日本予選は5チームで争われ、日立物流は2位になったものの、「最初、勝手が分からず、決勝に行けるとも思っていませんでした」と、チームのメンバーは口を揃えます。

単に幸運なだけでは初出場で予選を突破できるはずもありません。現実のビジネスをモデルにしている以上、経験上ある程度の結果予測は可能です。

「今までの実際のビジネスでの経験を元にExcelで仮定の式を作り、パラメーターを入力してみて、どうなりそうだという予測をするシミュレーターを作りました。それを試しながら、ゲーム上で設定が必要なパラメーターを決めていくといったこともやっていました」と、チームメンバーの延さん。

ROIの最大化を実現するためには、各部門が個々に最適化を追求していては難しく、計画の段階で、SCMを部門間で整合し、同期して実行していくことが重要となるため、それに対応する戦い方として、自前のシミュレーターを作るというのも、現実に即した考え方。その正しさが、ある程度証明されたということかもしれません。

「好成績を上げられたのは、このチームの仲が良かったということも大きいと思います。実際、大会に参加して思ったのは、ツールの良し悪し以上にチームワークとコミュニケーションが大事ということです」と語るのは、今回のチーム編成を行った西川さん。

メンバーそれぞれが持っている考えをぶつけあって、短時間で最適解を導き出すためには、知識があるだけでなくお互いに十分な信頼関係ができていることが不可欠だからです。

ゲームの経験は少ないけれど、ビジネス現場での経験と、チームの結束力を強みとして活かすことができたのが良い結果につながったのではないかと、チームメンバーは分析しています。

本来、世界大会は優勝チームのみが出場するのですが、今回はオンライン開催となったため、2位まで世界大会の出場権が与えられ、日立物流も世界大会へ進むことができました。

2020年11月19日から21日までの4日間にわたり、日本時間で22時から24時までの2時間を戦うことになりました。

後編につづく