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日立物流

(後編)SSCVは、国内のトラック輸送産業を救う、デジタルプラットフォームとなりうるのか?

『運輸・交通システムEXPO』展示会訪問レポート後編

日立物流は、2021年6月2日(水)から4日(金)、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された『運輸・交通システムEXPO』に出展し、SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)の魅力を来展者に伝えました。レポート後編は、来展者の感想、展示会に参加した日立物流社員および関係者の感想に加え、物流ライターの坂田良平が感じた、SSCVの魅力と可能性について考えます。


執筆:坂田良平

※本稿内の説明、主張はすべて筆者なりに解釈し見解を述べたものであり、日立物流の説明、コンセプトとは異なるケースがあることをご承知ください。各サービスに関する詳細説明は、日立物流担当者までお問い合わせください。

前編はこちらからご覧いただけます。
(前編)日立物流の輸送事業ノウハウを詰め込んだSSCVの可能性とは?

来展者の反応

トラックの運転席を模したイメージディスプレイが、来場者の目を引いた
トラックの運転席を模したイメージディスプレイが、来場者の目を引いた

展示会の会期は、コロナ禍による緊急事態宣言と重なっており、残念ながら来場者の数は、決して多くはありませんでした。あくまで私の肌感覚ですが、平時の展示会と比べると、来場者数は1/3程度だったのではないでしょうか。ただしその分、熱心に話を聞いている来場者が多かったように見受けました。

日立物流ブースに立ち寄っていただいた方にお声がけし、感想をお聞きしました。ご紹介しましょう。

「物流会社である日立物流が、自社でPoCを行い、製品化したというのは、正統なビジネスアプローチだと思う。感心した。」

「OBD2について知らなかった。本当に実現できるのであれば、SSCV-Vehicleはすごいサービスだと思う。」

「(SSCV-Safetyについて)分かりやすくて、ドライバーへの指導がしやすい。現在利用しているドラレコは、危険運転を検知し、アラートを発する機能はあるけれども、実際に確認するのはとても面倒なので。」

SSCVを評価する声がある一方、厳しい声もありました。

「もっと自動化できるのではないか?特に乗務前点呼時の測定は、時間がかかりすぎて現場の負担にならないかと危惧する。」

「想定される利用料金を聞いたが、少し高い。うちでは導入は難しい。」

また、展示ブース対応をした、日立物流社員および関係者の手応えもご紹介しましょう。

「Safety、Smart、Vehicleと、すべての展示をまわる方が多く、手応えを感じた。」

「安全への関心が高く、現在利用しているデジタコ、ドラレコなどを安全対策に有効活用できていないことに問題意識を抱いている方が多いように感じた。」

手応えを感じ、次回打ち合わせへの約束を取り付けることができたケースが複数あった反面、消化不良感や今後の課題を抱いた者もいたようです。

「競合調査や協業相手を探す目的での来展者が多く、運送会社の来場者が少ないのが残念だった。」

「総じて手応えは感じたが、反面、運行管理者や配車担当者など、実務を行っている方からどのように共感を得ていくのか、課題を感じた。」

SSCV-Smartに期待する、業界標準デジタルプラットフォームとしての可能性

筆者は以前、以下のように言及したことがあります。

運送会社側の経営力を高めるための仕組みも必要である。ここで言う仕組みとは、システムと教育である。まず、運送会社が無理のない範囲(料金)で利用できる基幹システムの開発と提供を、国なりトラック協会なりで進めるべきではないか。

出典
国交省が定めた「標準的な運賃」を運送会社が軽視しているワケ(ビジネス+IT)

拙稿では、標準的な運賃の課題を指摘した上で、「日本の物流を守るため、今求められること」として、「仕組み」の必要性に言及しました。

「仕組み」の必要性については、経済産業省が2020年12月に発表した『DXレポート2』の中でも言及されています。

『DXレポート2』で言及されるデジタルプラットフォームの概念(筆者作成)
『DXレポート2』で言及されるデジタルプラットフォームの概念(筆者作成)

「こうした共通プラットフォームによって生み出される個社を超えたつながりは、社会課題の迅速な解決と、新たな価値の提供を可能とするため、デジタル社会の重要な基盤となる」と、『DXレポート2』では言及しています。

多くの運送会社が陥っている慢性的な赤字(※前編参照)を解消し、安全と輸送品質を高める取り組みを、すべての運送会社がそれぞれ独自に取り組むことには限界があります。だからこそ、こういった運送会社が抱える諸課題を協調領域と捉え、仕組みとして解消できるデジタルプラットフォームが必要だと、私は考えています。

「輸送を支える。社会をよくする。」、SSCVへの期待

SSCVが実現したいこと
SSCVが実現したいこと

SSCVは、トラック輸送事業者だけでなく、バス、タクシーなどの旅客輸送事業者、もしくは営業車も含めた車両を使うすべての企業に向けたソリューションですが、こと物流事業においては、運送会社をターゲットにしています。多くの物流ソリューションベンダーが、資本力の大きい企業(すなわち購買力が高い企業)が多い荷主をターゲットとしていることを考えると、運送会社をターゲットとすることは、マーケティングとして上策とは言えません。

SSCVの説明資料には、その理由のヒントが記されていました。

SSCVはテクノロジーとオープンな協創を通じて、輸送事業をアップデートするデジタルプラットフォームです。物流会社だから提供できる現場発想のサービスでさまざまな課題を解決し、輸送と社会をよりよい未来へつなぎます。

日立物流は、「トラック輸送ビジネスの改善に貢献したい」という使命感をもって、SSCVを開発したのでしょうね。

日本国内にある6万2千社強の運送会社のうち、従業員が1,000人以上いる大企業は、わずか71社、割合にして0.1%しかありません。大企業と中小企業の間に、経営や商品・サービスの品質に差が生じるのは、致し方ないことです。しかし、トラック輸送事業を担う会社の規模によって、トラック輸送事業の輸送品質、そして安全に差が生じるのは、断じて望ましいことではありません。

だからこそ、日立物流が長年に渡って蓄積してきた、トラック輸送事業に関するノウハウを知財化し、中小運送会社でも利用できるようにソリューションに仕立てたSSCVには、トラック輸送事業における協調領域のデジタルプラットフォームになりうる可能性があると、私は期待しています。

しかし一方で、SSCVの利用想定価格 ──知りたい方は、ぜひ日立物流担当者と直接会って、聞いてくださいね── だけを聞けば、「良いものだけど、ウチではねぇ...」と尻込みする方がいるのも仕方ないと、私は思います。なんと言っても、財布の中身には上限がありますし、また中小運送会社における財布の大きさは、大企業のそれとは違うのですから。

日立物流グループ、実はSSCVを実践し、利益を生み出した実績をお持ちです。まだここでは明らかにすることができないのが、とてももどかしいのですが。だからこそ、日立物流には、SSCVを利用することで、コストを利益に変えることができることを、一日も早くストーリーとしてまとめ、世にアピールして欲しいと、私は切に願います。

これは、私が今回の展示会で、唯一残念に感じたポイントです。

余談ですが、エコドライブも同じではないでしょうか。これだけエコドライブが運送業界に普及したのは、環境負荷低減といった社会貢献意識以前に、「エコドライブを徹底すれば、燃料コストの大幅な削減が可能である」というコスト削減メリットが、広く運送業界に広まったからだと、私は考えています。

SSCV-Safetyは、2021年7月に販売を開始、その後、さらなる機能拡張も予定されています。SSCV-Smartは、日立物流グループと協力会社へ展開中であり、SSCV-Vehicleは来年度中の販売開始を予定しています。

状況を鑑みれば、今はまだ、SSCVに対する最終的な評価を下す段階ではありません。しかしSSCVがわくわくするような可能性を秘めたソリューションであることは、私が請け負いましょう。

興味を持った方は、ぜひ日立物流担当者から、直接説明を受けてください。きっとあなたも、その可能性に驚くはずですから。

著者 坂田良平 プロフィール

Pavism代表。

「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。筋トレ、自転車、オリンピックから、人材活用、物流、DXまで、幅広いテーマで執筆活動を行っている。

連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、LOGISTICS TODAYなど、物流メディアでの執筆多数。