ページの本文へ

Hitachi

日立物流

(前編)日立物流の輸送事業ノウハウを詰め込んだSSCVの可能性とは?

『運輸・交通システムEXPO』展示会訪問レポート前編

日立物流は、2021年6月2日(水)から4日(金)、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された『運輸・交通システムEXPO』に出展し、SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)の魅力を来展者に伝えました。物流ライターの坂田良平が、SSCVの魅力と可能性に切り込みます。


執筆:坂田良平

※本稿内の説明、主張はすべて筆者なりに解釈し見解を述べたものであり、日立物流の説明、コンセプトとは異なるケースがあることをご承知ください。各サービスに関する詳細説明は、日立物流担当者までお問い合わせください。

日立物流の輸送事業ノウハウを詰め込んだSSCV

運送会社の多くは、慢性的な赤字に苦しんでいます。国内に6万2千社強存在するトラック輸送事業者の63%は、運送事業ベースでは赤字(※営業利益)という現実があります。

一方で、運送会社に対する安全と輸送品質への要求は、ますます高くなっています。高止まりする安全と輸送品質に対する要求に応えながら、どうやってトラック輸送事業の収益改善を図るのか?──この課題をクリアしなければ、国内の運送会社の多くは、トラック輸送事業の維持継続が難しくなっていくでしょう。

日立物流のSSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)は、トラック輸送事業の強靭化を図り、持続可能な物流へとつなげることで、社会全体への貢献を果たすべく生み出されました。『運輸・交通システムEXPO』の訪問レポートとともに、来展者への声も交えながら、SSCVの可能性について考えます。

輸送デジタルプラットフォーム SSCVとは

SSCVの概要
SSCVの概要

日立物流は、国内物流マーケットにおける数少ない大企業であると同時に、自身もトラックを保有する物流企業です。

運送業界は、91.3%が従業員50名以下の中小運送会社の集合体です大企業に比べ、限られた「ヒト・モノ・カネ」で経営をしている中小運送会社が行うことのできる安全と輸送品質への投資には、限界があります。

SSCVは、自社グループもトラックを保有し、実運送を行っている日立物流が、これまで蓄積してきたトラック輸送事業に関するノウハウを知財化したソリューションです。

トラック輸送事業の基本となる、安全を守る仕組みを提供した上で、2024年問題などと揶揄されることもある運送業界の働き方改革を推進し、従業員を守ったうえで、運送業界全体の地位向上につながるストーリーを提供できる可能性を秘めていると、私は考えています。

SSCV-Safety、交通事故を防ぐ「仕組み」

筆者(左)に説明する日立物流 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ 部長補佐 栗山普一氏(右)
筆者(左)に説明する日立物流 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ 部長補佐 栗山普一氏(右)

これまでも、ドラレコ、デジタコなどに搭載されている加速度センサーなどを用いて、ドライバーの危険な運転を検知するソリューションはありました。SSCV-Safetyが従来のソリューションと大きく異なるのは、危険運転を検知するだけでなく、危険運転に至る以前に発生する、漫然運転そのものと、漫然運転を引き起こしかねないドライバーが抱える心身の不調を検知できる点にあります。

  • 乗務前点呼実施時に、体温計、血中酸素濃度計、血圧計、自律神経センサーを用いてドライバーの疲労やストレスを可視化する仕組み。
  • 独自のIoTドラレコを用い、運転業務中のドライバーの危険運転と、危険運転につながりかねない漫然運転などを検知する仕組み。
  • これらの仕組みによって検知されたドライバーの状態を、運行管理者がダッシュボードで確認し、短時間かつリアルタイムに把握できる仕組み。

ハインリッヒの法則では、「1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故があり、そしてさらにその背後には、300件のヒヤリハットが隠れている」と警告します。

SSCV-Safetyは、漫然運転・危険運転を招いてしまいかねない、ドライバー本人も気が付いていないようなストレスや疲労、もしくはその兆候を独自のアルゴリズムによって検知し、ヒヤリハットにつながる漫然運転を防ぎます。

ドライバーの体調管理や危険運転検知を分かりやすくかんたんに。 SSCV-Safetyのダッシュボード

例えば、あなたが利用しているドラレコでも、加速度センサーなどが検知した危険運転の動画を確認できる機能はあるはずです。しかし、その確認には時間と手間がかかるかもしれません。

SSCV-Safetyでは、ドラレコによる危険運転検知はもちろん、乗務前点呼で確認したドライバー全員の体調などを分かりやすく、そしてかんたんに確認することができます。

展示会当日、私がデモンストレーションを受けた感触では、全ドライバーの状態(乗務前の体調チェック結果と、乗務後に行う運転状態の振り返り)を確認するのに必要な時間は、ざっと10分程度です。もちろん、注視すべきドライバーがいれば、SSCV-Safetyのダッシュボードが示す注意項目に従い、深堀りしてドライバーの運転状態や体調、ストレス指数などをチェックすることができます。

「ドラレコの映像を定期的にチェックすれば、危険な運転、事故を起こしかねないドライバーの洗い出しをすることはできます。ただ、現場は忙しく、その手間と時間をかける余裕がありません」──これは私が某大手路線便事業者の安全担当者から聞いた悩みです。

程度の差こそあれ、これは多くの運送会社が感じているジレンマではないでしょうか。

SSCV-Safetyには、仕組みとして漫然運転を防ぎ、交通事故の撲滅を実現する先進性があります。

SSCV-Safetyとともに、日立物流が培ってきた安全指導のノウハウを提供

SSCV-Safetyを用いた安全指導の事例
SSCV-Safetyを用いた安全指導の事例

上図は、日立物流が行ったドライバーへの安全指導の事例をまとめたものです。図表中にあるインシデントとは、SSCV-Safetyによって検知された、脇見や急制動、危険運転等のことです。

上図は、インシデント惹起者119名のうち、たった10名が約半数のインシデントを起こしていることを示しています。問題行動の多くは、限られた少数の人が引き起こしていること──これはトラック輸送事業に関わる多くの方が、経験として感じていらっしゃることではないでしょうか。

SSCV-Safetyでは、対象となるインシデント惹起者それぞれが抱えるインシデントの傾向を明らかにできます。つまり、問題のある運転を行っているドライバーをピックアップした上で、その指導および改善のポイントまで、SSCV-Safetyは示してくれるわけです。

SSCV-Safetyがあれば、運送会社は、ドライバーに対する安全指導に掛かる時間を削減したうえで、さらに効率も質も優れた指導を行うことができるようになります。

SSCV-Safetyでは、標準機能としてインシデント実績の集計機能を既に実装しており、それぞれのインシデントに対する教育メニューを提供することを予定しています。さらに、要望があれば、日立物流による個別指導の提供も検討中とのこと。

「安全教育は行いたいのだけれども、時間も、ノウハウも、そして人材もいない!」と悩む運送会社にとっては、とてもありがたいサービスでしょう。

SSCV-Smart、健全な輸送事業を遂行するためのデジタルプラットフォーム

SSCV-Smart機能一覧
SSCV-Smart機能一覧
筆者(左)に説明する日立物流 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ 担当部長 浦瀬大河氏(右)
筆者(左)に説明する日立物流 輸送事業強化PJ SSCV強化グループ 担当部長 浦瀬大河氏(右)

SSCV-Smartは、実輸送を担う運送会社と、荷主ないし元請事業者をつなぐ、輸送デジタルプラットフォームです。

見積から発注、受注まで、輸送案件の獲得と確定に至るまでの一連のやりとり、車両割付や運行指示書など管理帳票発行などの配車・運行管理業務、そして検収や請求管理。こういった輸送事業に付きもののやりとりを、インターネット上で行うことができる輸送デジタルプラットフォームが、SSCV-Smartなのです。

今後の拡張機能にこそ注目したいSSCV-Smart

SSCV-Smartにおいて、今後提供予定の拡張機能
SSCV-Smartにおいて、今後提供予定の拡張機能

率直に言えば、現状のSSCV-Smartに似た機能、コンセプトを備えた競合他社ソリューションはいくつかあります。SSCV-Smartが、日立物流らしさをより発揮していくのは、ここに挙げた拡張機能が実装されたタイミングだと、私は考えます。

例えば、上図にある市井の求車求貨サービスとの連携、早期支払いサービスや電子帳票保管といったサービスが、SSCV-Smartという一つのプラットフォームで完結できれば、運送会社の業務改善に大きく貢献することでしょう。

日立物流では、現場からのニーズを吸い上げ、今後さらに未発表の拡張機能を検討しているとのことです。SSCV-Smartに限ったことではないのですが、これも現場を知る日立物流ならではでしょう。

SSCV-Smartを導入することで、トラック輸送事業に必要な営業、コンプライアンス、経理などの要素を、すべて充足させることができるかもしれない──なんともワクワクする話です。

SSCV-Vehicle、事業用車両まわりのサービスを包括的に提供するソリューション

SSCV-Vehicleの概要
SSCV-Vehicleの概要

SSCV-Vehicleは、車両に関するさまざまな業務に対し包括的に対応し、車両に関わる事業者の経営を支援することを目的としています。サービスコンテンツとしては、「車両調達・リース」「保険・税金」「修理対応/法定点検(定額保守)」や、トラックデータ※を活用した「遠隔診断」「故障予兆」を推進しています。

私が特に感心したのは、上図における故障修理、予防整備に関するソリューションです。

自動車輸送産業における、トラック、バス、タクシーなどの車両管理は、輸送事業者のドライバー、整備管理者、そして整備事業者の整備士が行っています。しかし、消耗品の交換・車両の代替等は明確な基準がないことから、整備担当者の経験や力量などに依存してしまうケースも見受けられます。

SSCV-Vehicleは、整備担当者に属人化しがちな車両の状態把握を、トラックから吸い上げたデータをもとに判断することで定量的に把握することを可能としました。

※トラックデータ
後述のOBD2を介して、車両の内部コンピュータから取得する故障や稼働に関するデータのこと。

OBD2を活用するSSCV-Vehicleが画期的な理由

筆者(奥)に説明するユニアデックス株式会社 DXビジネス創生本部 DXビジネス開発統括部 ビジネス開発二部 チーフスペシャリスト 木村修氏(手前)
筆者(奥)に説明するユニアデックス株式会社 DXビジネス創生本部 DXビジネス開発統括部 ビジネス開発二部 チーフスペシャリスト 木村修氏(手前)

SSCV-Vehicleでは、OBD2を活用して、トラックからさまざまなデータを吸い上げ、そして活用します。

OBD2(On Board Diagnosis second generation)とは、車両に搭載され、各種機器を電子制御するECU(Electronic Control Unit)、もしくは複数のECUを統括する役目を持つCPU(Central Processing Unit)から、さまざまな車両データを取得することを目的とした共通規格です。転じて、接続コネクタそのものをOBD2と呼ぶケースもあります。日本では、2008年10月からOBD2を搭載した車両が登場し、2010年9月以降に新車販売されたすべての車両に、OBD2の取り付けが義務化されています。

OBD2による車両整備への活用は、乗用車では進んでいますが、トラックなどの事業用車両における利活用は限定的でした。

7~8年前、実は私もOBD2から情報を取得し、活用するシステム開発にチャレンジしたことがあります。しかし、さまざまな障害、特にトラックメーカーごとに異なるデータを解析するという壁に阻まれ、断念しました。

日立物流グループの日立オートサービスと協業してSSCV-Vehicleの開発に携わるユニアデックス社は、こつこつとデータを解析し、車両整備に活用するための知見を蓄積したのです。

ECUからOBD2を介してリアルタイムに取得できるデータは、電圧、水温を始め、約250種類にも及ぶのだとか。データ解析を成し遂げた日立オートサービスとユニアデックスの努力と技術力には脱帽です。

「データは宝です」、SSCV-Vehicleのキーマンが言い切る理由

筆者(左)に説明する日立オートサービス 代表取締役社長 河田雄二氏(右)
筆者(左)に説明する日立オートサービス 代表取締役社長 河田雄二氏(右)

「データは宝です」、日立オートサービス 代表取締役社長 河田氏は、このように説明してくれました。日立オートサービスは、SSCV-Vehicleにおいて、サービス全体の設計、運営、そして車両整備などを担います。

SSCV-Vehicleでは、ECUからOBD2を介して吸い上げたさまざまデータを解析することで、トラックの遠隔診断を行い、故障の予兆を検知します。人間でも、「熱っぽいな」「お腹がシクシクと痛む」といった予兆から、大きな病気に至る前に治療を開始することができます。SSCV-Vehicleは、物言わぬ車両から、故障の予兆をヒアリングできるソリューションなのです。

車両が故障してから修理をすると、手間がかかり、そして修理費用も高額になりがちです。運送会社側からすれば、修理が完了するまでは仕事に使えなくなるため、売上にも影響が出ることになります。しかし、SSCV-Vehicleによって、故障の予兆を検知し、故障してしまう前に対応ができれば、売上への影響は最小限に抑えることができますし、修理にかかる時間、コストも抑えることができます。河田社長が「データは宝です」と言い切る理由も、お分かりいただけることでしょう。

SSCV-Vehicleは、この様なデータを活用したサービスを活用することで、メンテナンスサービスを向上させていくことを目指しています。車両整備費用の削減につながるSSCV-Vehicleのサービスが開始されれば、大きな注目を集めることは間違いないでしょう。

※後編では、来展者の感想、展示会に参加した日立物流社員の感想に加え、SSCVの魅力と可能性にさらに切り込みます。

後編につづく